2018年3月、私がこのニュースを聞いたとき、一番心配していることが起きてしまったと思った。完全自動運転車による死亡事故の発生、自動運転技術に関わる研究者やエンジニアの多くが心配していたことである。
ウーバーの自動運転車が、アリゾナ州で走行実験中に、歩行者をはね死亡事故を起こした。この事故で亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。
この事故を受け、各社の公道実験は自主的に中止されていた状態となってしまった。
テスラでも、自動走行モードに関しての死亡事故もありました。
このような事故は、あってはならないことですが、それにより技術の停滞がおこることも残念なことです。
なぜなら、人間が運転する社会では、死亡事故は、頻発しているからです。(日本では、2017年に、交通事故総合分析センターによると、約3700件の死亡事故が報告されています。重症で約3万5千件。)
完全自動運転車が実用化されれば、劇的にこうした事故は減るでしょう。しかし、その過渡期ではどうなるか? 不完全な人間の運転する車社会の中に、完全自動運転車が入り込んでいく形になるため、難しいのです。
自動運転が実社会に実装される際に、残念ながらこのような悲しい事故は、今後も発生するでしょう。それが、人間が起こす事故の発生確率よりも遥かに低い確率であるとしても、「事故を起こす可能性は明らかに人間より低いが、事故を起こす完全自動運転車」を人間がどこまで受け入れることができるか?
ここが最大の関門です。
また、完全運転自動車は、完璧に人間の作った交通ルールを守って運転するはずですので、そのルールを破って運転する人間側からみれば、トロトロ走ってるように見えたりするなど、対人間との間での違和感というようなデータが実証実験でとられています。
2018年6月23日、ロイター通信の報道を受け各社メディアが、ウーバーの自動運転事故での死亡事故の原因が、緊急時に自動運転車の操作を担うはずの運転席の係員が携帯電話で動画を視聴していたことを報じています。事故が発生する約40分前から、動画で配信された人気番組を見ていたようです。ある意味、この事実は、現在の自動運転車が、そのくらいのことをしてもいいと、この係員には思わせた(あってはならないことですが)可能性もある、つまり、それだけ完成度が上がってきているという風に読むこともできるかもしれません。
こういった自動運転車による事故は、これからも論争の的になっていくでしょう。そして、そこでの経営判断により、自動運転車の開発競争の優劣さえも、決めてしまうかもしれない程の重要な問題なのです。