いよいよ、スマートグラス(ウェアラブル眼鏡)が、注目を集める機運がでてきた。その理由は、5Gの通信の開始だ。スマートグラスに関しては、グーグルグラスでの撤退などを経て、次こそは、普及するフェーズに入って欲しい。グーグル自体も、5月に新型グーグルグラスを発表している。
中国のスタートアップ企業Nreal Ltd.(エンリアル リミテッド)が、今年の1月(CES2019)に革新的なスマートグラス「NrealLight」を発表。従来品よりも軽く、視野角も広いという特徴から、世界中で注目を集めた。KDDIが、5月にNreal Ltd.とパートナーシップを結び、国内に普及させるための共同プロジェクトを進行させている。
10月7日にエンリアルは、メディア向け発表会を開催し、日本のアプリ開発者を募集開始した。デバイス自体は、重量88g、そして、なんと価格が499ドル。2020年前半には、手に入りそうだ。また、メルカリが、エンリアルライトを使い、本気で新しい購買体験を研究しているのがわかるデモがあったので見てほしい。
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目次
エンリアルとは エンリアルライトとは
エンリアルとは、中国のスタートアップ企業Nreal Ltd.(エンリアル リミテッド)のこと。
エンリアルライトは、エンリアルが作った MR(Mixed Reality)グラス(複合現実メガネ)のこと。現実空間に、デジタル情報をのせて表示ができる。
「nreal light」は、単体で使用するものではなく、USB-Type Cケーブルでスマートフォン、もしくは米国クアルコム製のチップセットSnapdragon TM 845搭載の「nrealコンピューティングユニット」に接続することにより動作します。スマートグラス本体の軽量化や、安全性の確保、稼働時間の延伸を実現するほか、位置トラッキングにも対応したAR・VRアプリケーションを利用できます。
さらに、52度の広い視野角に加えて、わずか88グラムという従来のスマートグラスに無い軽さを実現しています。
「nreal light」は、nreal(エンリアル)(本社: 北京、CEO: Chi Xul)が開発したスマートグラスで、KDDI株式会社とnreal(エンリアル)は戦略的パートナーシップを締結し、KDDI株式会社が国内利用に向けた対応をサポートします。
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価格、値段、発売日(消費者 Consumer 向け、開発者 Developer 向けキット)、同梱物(付属品)
一般消費者向け(コンスーマーキット)
価格:499ドル
発売日:2020年初旬
同梱物:Glasses, USB-C compatible
ディベロッパー(開発者)向けキット
価格:1199ドル
発売日:2019年9月下旬
同梱物:
Glasses
Controller
Computing Unit
USB-C compatible
USB Power Adapter
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スペック、性能、重さ、コントローラー、コンピューティングユニット
重量:88g
接続:USB-C compatible
光学:Combined Lightguide 52° field of view (視野角52°)
Environmental Understanding:
SLAM (Simultaneous Localization and Mapping)
6DoF tracking
Plane detection
Image tracking
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スマートフォンと繋いで本体の軽量化を実現
写真は、開発中のもの。KDDIと組んでいるということは、KDDIの5G通信網をフルで利用できるということだ。期待大だ。
通常のメガネと比べて、あまり違和感はない。
その理由は、重さを軽くするために、眼鏡のフレーム部分の末端にケーブルが接続され、スマートフォンと繋がっている点だ。このスマホとの接続こそが、Nreal Ltd.のスマートグラスの一番の特徴。
これまでのKDDIの実証実験では、『バッテリーが短く長時間使えない』、『重すぎて長く装着していられない』という感想が多かったとのこと。
そこで、スマートグラス本体へのバッテリーが内蔵をやめ、スマートフォンから給電にした。
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スマホ連携でのメリット
スマートフォンからの電力の供給に加えて、以下のメリットも。
スマートフォンをコントローラーにしてスマートグラスを操作できるので、初めて使う人でも簡単に扱えるのもポイントです。専用アプリをインストールして、画面をタップするだけ。生産コストも低く抑えられるため、多くの人が気軽に利用できる道が見えてきた。
今後5G対応のスマートフォンに接続すれば、5Gの高速通信などのメリットを活かすことができます。
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目の前に100インチの仮想テレビが表示 3Dの映画鑑賞も。
イメージ映像を見てみよう。
スマートグラスを掛けると、目の前に100インチの仮想テレビが表示され、きれいな画質で3Dの映画鑑賞ができます。
スマホやタブレットと違って、見ている映像はグラスの中に表示されるので、ベッドやソファーの上で仰向きに寝ころびながらも観られますし、周囲の人からはのぞき見ができません。いつでもどこでもプライベートに大画面で映画を楽しめ、家だけではなく、新幹線や飛行機の中でも使えます!
博物館の展示品や歴史ある建造物など、実際に目の前にあるモノの情報をサーチして表示する機能の研究の進展や、高速・低遅延の5Gを活用できるようになれば、大容量の情報をクラウドで高速に処理してストリーミングできるため、従来のスマートフォンでは難しかった高解像度のゲームやアプリなどを、スマートグラスを掛けるだけで楽しめるようになるという。これまでの日常の景色は、スマートグラスによってバーチャルと融合し、全く別のものに変わってしまうかもしれない。ワクワクする時代が、すぐそこまでやってきた。
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日常の生活をアシストする機器へ。
買い物、旅行、アート、教育、スポーツなど、幅広い領域で生活シーンが、スマートグラスによって一変する未来を描いているようだ。
買い物
スーパーマーケットに行ったとき、今日の夕食に何を買うべきか迷います。IoTとの連携などを考えると、家の中の冷蔵庫の食材から、あと何を購入したら、こういう料理が作れるようなアシスト機能などを思い浮かべるが、
こんなときにスマートグラスでは、スーパーの陳列棚を通して視線を合わせただけで、生産地や生産者の思い、ネットショッピングのように他人の評価も確認できるようになり、食材購入の動機付けを考えているようだ。
AIが発展すれば、使用者の健康状態を考えた食品と料理メニューをおすすめしてくれるようになるかもしれません。こうしたことで買い物はかなり楽になりますよね。
さらにスーパーマーケットからも、その場でお客さまに合わせたクーポンの発行やダイナミックな会員価格表示などの新しい施策ができるようになれば、今までのビジネスの常識を破ることができるかもしれません。
コミュニケーション
ビジネスの場で、突然声をかけられたが相手の名前をなかなか思い出せないことがあります。スマートグラスに相手の名前や役職を提示してくれたり、さらに約束事やスケジュールなどが、対面するだけですぐチェックできる機能が生まれれば、より円滑に仕事の話ができるようになります。
遠隔充電で、日常にかかせないデバイスへ?
今後スマートグラスは、さらなる小型化やケーブルを使わない遠隔的な充電が期待されているとのこと。そうなれば現在のスマートフォンのように、私たちの生活に欠かせないものになるかもしれない。今回のNreal Ltd.のスマートグラスが日常で使われるようになるのは、そう先の話ではなさそうだ。
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購入方法
での発表をまとう。KDDIが戦略的パートナーシップを組んでいるので、KDDI(AU)で購入可能になるかもしれない。
メルカリ実証実験中 その1(新しい購買体験がすぐそこに)
是非見てください。こんな購買体験が当たり前になる日がくるのか。ワクワク。
メルカリが、KDDIと実証実験中ですが、これすごいです。友達の家にある素敵な靴を見つけたら、私も欲しいー。靴を指さし、類似商品を即座に探し、グーと指をやると、お気に入りに保存して、あとで、購入検討可能。
「Mercari Lens」とは、気に入った物を見つけた際に人差し指を物に指すだけで、「メルカリ」に出品されている類似商品を検索し、販売価格等の情報を表示するスマートグラスに最適化したアプリです。
今後の5G普及がもたらす変化を見据え、XR技術による時間と空間を超える体験の創出に向けて、KDDI株式会社の協力のもと「nreal light」版のプロトタイプを開発しました。
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メルカリ実証実験中 その2(新しい購買体験がすぐそこに)
メルカリが、スマートグラスの中でも、エンリアルライトを選んだ理由は、端末普及率を考えての以下の3点。
1. 価格が安い(Nreal Lightは、一般向けが499ドルで2020年の初旬に発売予定です。既に一般普及しているスマホ等に大部分の処理を任せる方法で、低価格化が実現しています。)
2. 技適を取得する必要がない(Nreal Lightは、有線接続したスマホ(技適取得済み)等で無線通信するので、海外端末の日本市場参入への大きな壁の一つである技適を取得する必要がありません。)
3. 過去に開発したスマホアプリの資産を活用できる(処理の大部分はスマホなので既存のスマホアプリと互換性を持つ可能性が高く、機能を作り変える必要がありません。)
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そして、メルカリの購入検討者と、相談相手との物理的な距離感(遠い、近い)の2パターンを、それぞれ、スマホ、スマートグラスを使った場合のケースで実証実験をしている。かなり、本気で、スマートグラス普及時の購買体験を検討している様子がうかがえる。
購入検討者と相談相手の物理的な距離が”遠い”
「スマホを持った購入検討者は”自宅”、スマートグラスを掛けた相談相手は”屋外”に滞在している」シーンで、必要に応じて音声で買い物相談する方法を想定しています。
1. スマホを持った購入検討者視点
以下のデモ動画は、スマホを持った購入検討者視点の映像です。
タイムライン
- 0:00 「アプリを起動」 → ホーム画面を表示
- 0:01 「画像検索ボタンをタップ」 → 画像検索画面を表示
- 0:02 「探したいものをタップ」 → 画像検索で取得した類似商品情報を表示
- 0:04 「類似商品情報をタップ」 → タップした類似商品情報を表示
- 0:26 「共有ボタンをタップ」 → 表示中の類似商品情報一覧が相談相手に表示される
- 0:30 「類似商品情報をタップ」 → タップした類似商品情報が相談相手に共有される
AR機能で最も難関なのが、電池消費の激しいカメラを起動する程の合理性を購入検討者に提供できるかという点です。単純に、出品物の3Dモデルを表示するだけならば、画面上で3Dモデルを操作できれば良く、AR機能がそこまで求められていない事があります。
そこで、”目の前のもの”を知るために必要な「カメラを起動する画像検索」で類似商品を検索後、”目の前のもの”と比較するための3Dモデルを表示する形にしました。
2. スマートグラスを掛けた相談相手視点
以下のデモ動画は、スマートグラスを掛けた相談相手視点の映像です。
タイムライン
- 0:00 「アプリを起動」 → 待機画面を表示
- 0:11 「購入検討者が共有ボタンをタップ」 → 購入検討者の類似商品情報一覧が表示される
- 0:14 「購入検討者が類似商品情報をタップ」 → 購入検討者がタップした類似商品情報が共有される
- 0:17 「頭を左に回す」 → 左に表示された類似商品を閲覧
- 0:20 「前に動く」 → 特に変更なし
出品物の表示方法はスマートグラス装着者を"基準"に前方120度固定表示することで、今回の展示のような限られたスペースで幅広く使用できない環境だとしても閲覧可能になりました。閲覧方法は、頭を回す、または後述する「4. スマートグラスを掛けた相談相手視点」で話す3DoFコントローラーでスクロールすることを想定します。
今後を考えた場合は、Nreal Ltd.(以下、Nreal)が実装予定していたNRSDK内のハンドトラッキング機能で、スマートグラスを掛けた相談相手の手と同じ動作する手の3Dモデルを、購入検討者に表示する方法も良いかもしれません。この方法により、出品物の3Dモデルの特定箇所への指差しやグッドサイン、または掴む等の動作が可能になります。
また、多くのソーシャルVRアプリは、アバターの顔を表示していますが、買い物相談に特化する場合、手の動作と声、商品情報の共有だけで良いかもしれません。なぜなら、アバターの顔があると、出品物から顔に視線を向ける動作が発生するので、操作が複雑になります。
購入検討者と相談相手の物理的な距離が”近い”
「スマホを持った購入検討者の”隣”に、スマートグラスを掛けた相談相手がいる」シーンを想定しています。
スマホだけで実証実験する場合は、「購入検討者と相談相手の物理的な距離が、”遠い”」のみを考えていました。なぜなら、お互いの距離が近い場合は、スマホの画面を見せれば良いだけだからです。
しかし、スマートグラスはそうはいきません。スマートグラスを友人に貸している場合は自分が見えなかったり、友人は度の合わないレンズを通して視る可能性があります。
3. スマホを持った購入検討者視点
以下のデモ動画は、スマホを持った購入検討者視点の映像です。
タイムライン
- 0:00 「アプリを起動」 → ホーム画面を表示
- 0:02 「画像検索ボタンをタップ」 → 画像検索画面を表示
- 0:06 「探したいものをタップ」 → 画像検索で取得した類似商品情報を表示
- 0:10 「類似商品の3Dモデルをタップ」 → タップした類似商品情報を表示
- 0:33 「共有ボタンをタップ」 → 表示中の類似商品の一覧が相談相手に表示される
- 0:35 「類似商品の3Dモデルをタップ」 → タップした類似商品情報一覧が相談相手に共有される
お互いの距離が”遠い”場合と異なり、”近く”の人と相談するため、表示方法は端末の種類にかかわらず、共通です。
今回のデモで最も検討したのが、3Dモデルを表示する位置です。”探したいもの”を基準に上や横に表示する方法もあったのですが、今回は手前を採用しました。なぜなら、手前は類似画像検索時に”探したいもの”をカメラ内に入れるので、必ず自分と対象の間に空間が存在する、かつ前述した指差し等のハンドジェスチャーやトラッキング機能と相性が良いのが理由です。複数の3Dモデルを1列に表示する方法は、探しにくいので再考中。
4. スマートグラスを掛けた相談相手視点
以下のデモ動画は、スマートグラスを掛けた相談相手視点の映像です。
タイムライン
- 0:00 「アプリを起動」 → 待機画面を表示
- 0:05 「購入検討者が共有ボタンをタップ」 → 購入検討者の類似商品情報一覧が表示される
- 0:08 「購入検討者が類似商品情報をタップ」 → 購入検討者がタップした類似商品情報が共有される
「3. スマホを持った購入検討者視点」と表示方法は同じです。
Nreal Lightは、有線接続したスマホを3DoFコントローラーとして、以下の動画のような操作が可能ですが、来場者に短時間で複雑な操作を限られたスペース内で体験してもらうのは難しいと判断し、今回は使用していません。
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なぜ5Gが必要なのか(メルカリ実証実験)
1. 高速大容量
フリマの出品物には、色落ちや傷等があり、新品より”あらゆる角度から確認する”必要性があります。これが可能になる高精細な3Dモデルを画像と同程度の速度でダウンロードできるようになるかもしれません。
2. 低遅延
購入検討者と相談相手の情報が、対面でのコミュニケーションと変わりなく共有できるようにかもしれません。
3. 多接続
買い物相談は、1対1である必要性はないので、世界中に住む人々と繋がり、コミュニケーションできるようになるかもしれません。
出展:エンリアル、KDDI、メルカリ